握力の鍛え方や知識

握力の平均値がおかしい?高すぎると感じる理由を年齢別・男女別に徹底解説

握力測定をして「平均値より全然低い」と驚いた経験はないでしょうか。ネットで調べた平均値と比べて、自分の数値があまりに低く感じて不安になる方は少なくありません。

実は握力の平均値が「高すぎる」と感じるのには明確な理由があります。公表されているデータと実際の測定結果にはギャップが生じやすく、多くの人が「自分は平均以下なのでは」と誤解してしまうのです。

本記事では、握力の平均値が高く感じられる理由を詳しく解説し、年齢別・男女別の実際のデータを紹介していきます。さらに高齢者の握力の実態や、平均に届かない場合の対処法まで網羅的にお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

握力の平均値が「高すぎる」と感じる3つの理由

それではまず、なぜ握力の平均値が高すぎると感じてしまうのか、その理由について解説していきます。

測定方法による誤差が大きい

握力測定は一見シンプルに見えますが、測定方法によって数値が大きく変わってしまいます。正しい姿勢で測定しないと、本来の力を発揮できません。

測定時は腕を自然に下ろし、グリップを第二関節で握るのが基本。しかし多くの人は腕を曲げたり、グリップの位置がずれたりして測定してしまうのです。

また測定器の種類によっても数値は変動します。学校や病院で使用される精密な機器と、家庭用の簡易測定器では精度が異なるでしょう。このような測定環境の違いが、平均値とのギャップを生む一因となっています。

公表データは健康な人のみを対象としている

多くの平均値データは健康診断や体力測定を受けた健康な人々のデータを基にしています。つまり病気や怪我で測定できなかった人、体調不良の人は含まれていません。

公表されている平均値は、実際の一般人の平均よりも高めになっている可能性が高い

特にスポーツ庁や文部科学省が発表する体力測定データは、積極的に測定に参加できる健康状態の良い人が対象。病院のデータも同様で、通院できる程度の健康状態の人が中心なのです。

そのため一般的な生活を送る人々の実態とは、やや乖離が生じている可能性があります。

自分の握力を正しく測れていない可能性

自宅で測定する場合、準備運動なしにいきなり測定していませんか。握力は測定前のコンディションによって5〜10kgも変動することがあります。

寒い環境や疲労が溜まっている状態では、筋肉が十分に力を発揮できません。また1回だけの測定では偶然低い値が出ることもあるでしょう。

公式の測定では通常、左右2回ずつ測定して最高値を採用します。しかし自己測定では1回だけで判断してしまい、本来の力より低い値で「平均以下だ」と誤解するケースが多いのです。

年齢別・男女別の握力平均値データ

続いては具体的な握力の平均値を、年齢別・男女別に確認していきます。

男性の年齢別握力平均値

男性の握力は20代後半でピークを迎え、その後は緩やかに低下していきます。以下は文部科学省とスポーツ庁のデータを基にした平均値です。

年齢 平均握力(kg)
20〜24歳 46.5
25〜29歳 47.2
30〜34歳 47.0
35〜39歳 46.8
40〜44歳 46.3
45〜49歳 45.7
50〜54歳 44.5
55〜59歳 43.2
60〜64歳 41.5
65〜69歳 39.8
70〜74歳 37.2
75〜79歳 33.5

男性の場合、40代までは46kg前後を維持するものの、50代から徐々に低下が目立ち始めます。60代を過ぎると年齢とともに加速度的に低下していくのが特徴でしょう。

ただしこれはあくまで平均値。デスクワーク中心の人と肉体労働の人では、同じ年齢でも10kg以上の差が出ることも珍しくありません。

女性の年齢別握力平均値

女性の握力も男性同様、20代後半がピークとなります。ただし男性との差は顕著で、平均して20kg前後の開きがあるのです。

年齢 平均握力(kg)
20〜24歳 28.2
25〜29歳 28.6
30〜34歳 28.5
35〜39歳 28.3
40〜44歳 28.0
45〜49歳 27.5
50〜54歳 26.8
55〜59歳 25.9
60〜64歳 24.8
65〜69歳 23.5
70〜74歳 21.8
75〜79歳 19.2

女性は40代までは28kg前後で安定していますが、50代から低下傾向が見られます。更年期以降のホルモンバランスの変化が、筋力低下に影響を与えている可能性もあるでしょう。

また女性の場合、日常生活での力仕事の頻度が男性より少ない傾向があり、それが平均値の差にも反映されていると考えられます。

高齢者の握力平均値の実態

高齢者の握力データを見て「意外と高い」と感じた方も多いのではないでしょうか。実は高齢者の平均値には大きな個人差とサンプリングバイアスが存在します。

測定に参加できる健康な高齢者と、介護が必要な高齢者では握力に20kg以上の差があることも

70代男性の平均が37kgとなっていますが、これは自力で測定会場に来られる人々のデータ。施設入居者や要介護者は含まれていないため、実際の平均よりかなり高めの数値なのです。

また高齢者は若い頃の職業や生活習慣によって、握力の維持度が大きく異なります。農業や建設業に従事していた方は70代でも40kg以上を維持するケースがありますが、事務職中心だった方は30kgを下回ることも珍しくありません。

したがって高齢者の場合、平均値はあくまで参考程度に考え、個人の経年変化を追っていくことが重要でしょう。

握力が平均に届かない場合の対処法

続いては平均値に届かなかった場合の具体的な改善方法を確認していきます。

正しい測定方法を知る

まずは正確な測定ができているか見直しましょう。正しい測定姿勢は握力値に5〜10kgの差を生むことがあります。

測定時のポイントは次の通りです。直立姿勢で足を肩幅程度に開き、腕は自然に下ろす。握力計のグリップは第二関節にかかるよう調整し、親指と人差し指が向かい合うように握るのです。

測定は左右それぞれ2回ずつ行い、最も高い値を記録します。1回目より2回目の方が高くなることが多いため、ウォーミングアップとして1回目を捉えると良いでしょう。

また測定前には軽く手を開閉して血流を良くしておくことも大切。寒い時期は手を温めてから測定すると、より正確な値が得られます。

握力トレーニングの基本

握力を向上させたい場合、専用のグリッパーを使ったトレーニングが最も効果的でしょう。負荷は現在の握力の70〜80%程度が理想的です。

初心者は10〜15回を3セット、週3〜4回から始めると良いでしょう。無理な負荷は腱鞘炎のリスクがあるため要注意。徐々に負荷を上げていくことが、安全で確実な向上につながります。

グリッパー以外では、タオル絞りも効果的なトレーニング。濡れたタオルを両手でしっかり絞る動作を繰り返すだけで、握力と前腕の筋力が鍛えられるのです。

またぶら下がり運動も握力強化に有効。公園の鉄棒などにぶら下がり、できるだけ長く姿勢を保つことで、握力だけでなく上半身全体の筋力向上が期待できます。

生活習慣で握力を改善する方法

トレーニング以外にも、日常生活の工夫で握力を維持・向上させることが可能です。タンパク質の摂取と適度な運動が握力維持の鍵となります。

食事では肉・魚・卵・大豆製品などのタンパク質を意識的に摂取しましょう。筋肉の材料となるタンパク質が不足すると、トレーニングしても効果が出にくくなるのです。

日常動作でも握力を使う場面を増やすと効果的。買い物袋を持つ、雑巾がけをする、瓶の蓋を開けるなど、些細な動作も握力トレーニングになります。

睡眠も重要な要素でしょう。筋肉の回復と成長は睡眠中に行われるため、質の良い睡眠を十分にとることが握力向上につながります。

握力は健康のバロメーター

続いては握力と健康の関係について確認していきます。

握力と寿命の関係

近年の研究で握力は寿命を予測する重要な指標であることが明らかになってきました。握力が強い人ほど長生きする傾向があるのです。

イギリスの大規模研究では、握力が5kg低下するごとに死亡リスクが16%上昇するという結果が報告されています。これは握力が全身の筋肉量や身体機能を反映しているためでしょう。

握力26kg未満(男性)、18kg未満(女性)は要注意のサイン

この数値を下回ると、転倒リスクや介護が必要になる確率が急激に高まります。特に高齢者では握力の低下が生活の質に直結するため、定期的なチェックが推奨されるのです。

ただし握力だけを見るのではなく、総合的な健康状態の一指標として捉えることが大切。握力が弱くても他の健康指標が良好であれば、過度に心配する必要はありません。

握力低下が示す健康リスク

握力の急激な低下は、さまざまな健康問題のサインかもしれません。1年間で10%以上の低下があれば医療機関への相談を検討すべきでしょう。

握力低下が示唆する可能性のある疾患には、サルコペニア(筋肉減少症)、脳卒中、関節リウマチ、神経疾患などがあります。特に片手だけが急に弱くなった場合は要注意です。

また糖尿病や心血管疾患のリスクとも関連があることが分かっています。握力が弱い人は、これらの生活習慣病を発症しやすい傾向があるのです。

握力は単なる「力の強さ」ではなく、全身の健康状態を映し出す鏡。定期的に測定して変化を記録しておくことで、早期に健康問題に気づくことができるでしょう。

定期的な測定の重要性

握力測定は年に2〜4回程度の定期測定が理想的です。同じ時間帯、同じ条件で測定することで、より正確な経年変化を把握できます。

測定記録はスマートフォンのメモアプリやノートに残しておきましょう。数年分のデータが蓄積されると、自分の握力の変化パターンが見えてきます。

急激な低下があった場合は、生活習慣を見直すきっかけになるでしょう。運動不足、栄養不足、過度なストレスなど、何らかの原因が隠れている可能性があります。

また健康診断の際に握力測定が含まれている場合は、必ず受けるようにしましょう。医療機関での測定は精度が高く、医師に相談する際の重要なデータとなるのです。

まとめ 握力の高齢者の平均値は?基本的に高すぎる?年齢別・男女別に徹底解説

握力の平均値が高く感じられるのは、測定方法の違いやデータのサンプリング方法が主な原因です。公表されている平均値は健康な人を対象としているため、実際の一般的な数値より高めになっている可能性があります。

年齢別・男女別のデータを見ると、男性は40代後半から、女性は50代から握力の低下が目立ち始めるでしょう。ただし個人差が大きく、生活習慣や職業によって大きく変動します。

平均に届かなくても過度に心配する必要はありません。正しい測定方法を身につけ、適切なトレーニングと生活習慣の改善で握力は向上可能です。

何より大切なのは、握力を健康のバロメーターとして定期的にチェックすること。経年変化を追うことで、自分の健康状態を客観的に把握できるのです。まずは正しい方法で測定し、自分の現状を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。